2025-09-13

2030-2040年 医療の真実


日々の読書から、おすすめを紹介します。今日は、

2030-2040年 医療の真実

2025年6月初版



1.著者


熊谷 頼佳

1977年慶應義塾大学医学部卒後、東京大学脳神経外科入局
1992年より京浜病院院長
認知症や地域医療に関する著書多数



2.どんな期待を持って読んだか


pivotで著者の動画をみたことがきっかけで、
もっと学びたいと思って読みました。

著者は、医師家系で育っており、
医者をもっと大事にすべきという発想かと最初は思っていましたが、
しっかり読んでみると全く違っていました。


3.構成



第1章 日本の医療・介護崩壊のリアル
第2章 2040年 医療の地獄絵
第3章 なぜ日本の病院は次々に潰れるのか
第4章 医療崩壊に導く5つの罪
第5章 海外に日本の未来が見える
第6章 2040年 日本の医療沈没を防ぐ処方箋



4.全体的な所感



第1章は、同じ内容を何度も繰り返し語っていたため、
少し残念に感じていましたが、
第2章、第3章と後半になればなるほど、
医療業界や厚生労働省の仕組みの問題などを扱っており、
問題の理解が非常に深まりました。

全体的な所感として、
日本の医療も本質的な問題はこじんまりとしたままであること
なのかもしれないなと感じています。

個人開業医が多くその維持を図っているため、
医療の効率化が進んでいないことの問題が大きいと感じました。

日本の農業も、家族経営の個人農家が大多数であるため、
規模の経済が働かず、生産性が低いことと
本質的には問題が似ているのではないかと推測します。



5.個別の印象的な内容



P59より、
厚労省が急性期病院の入院をへらそうとしているのは、
社会保険を圧迫する医療費総額を下げたいということに加えて、
国際的にみて長すぎる日本の入院期間を短くしたいとの目論見がある。
2019年には16日となったが、それでも欧米諸国より長い
(G7の他国に比べて倍になっている)

P60より、
急性期病院や療養型の病院も含む全病床の平均在院日数も、
1970年代から1990年代にかけて半減したものの、
2019年では27日間とOECD中で最も長い。
2位の韓国で15日間、それ以外の国は10日間以下だ。

P118より、
国民皆保険制度の導入前は、たくさん診療費を払ってくれた人に対しても
導入したら安価に診療しなければならなくなるため、
開業医の多くは皆保険制度の導入に反対だった

P166より、
医療制度の問題点は5つ。
1つ目は、病院経営への民間企業の参入を阻む、がんじがらめの法律
2つ目は、データに基づかずに思い付きで進められているとしか思えない医療政策
3つ目は、弊害のある投薬が野放しになっていること。
4つ目は、悪徳病院も良い病院も一緒くたになっていること。
5つ目は、病院より診療所の開業医を優遇している政策。

P174より、
厚労省の天下り先の国立病院は、税金補填があるため、
診療報酬改定で損失が出ても困らない。
財布を握っている財務省も、病院は利益を得てはいけない
という社会主義的な発想だけで動いているとしか思えない状況だ。

P187より、
医療崩壊を招いたのは、医療の効率化を阻止し、
開業医に有利な診療報酬体系を推進してきた日本医師会(開業医が中心の団体)
の責任も重大。
中医協や厚労省審議会などにも参加し、長年、
開業医を守る団体として機能してきた。

P196より、
病院での看取りを減らし在宅での看取りを増やすために、
厚労省は、2006年の診療報酬改定で、
在宅患者を1人看取れば10万円(10000点)という驚くような
高報酬制度をいきなり導入した。

P213より、
世界に目を向けると、医療制度は大きく3つのタイプに分けられる。
1つは、英国・カナダ・スウェーデンなどのように、
医療が100%税金で賄われている国営・公営方式。
2つ目は、日本・ドイツ・フランスのような社会保険方式
3つ目は、米国のように、基本的には民間の医療保険を使って医療にかかる民間方式
なお、米国では、低所得者を対象にしたメディケイド、
高齢者と障害者を対象にしたメディケア
という公的な医療制度が一応あるが、受けられる医療が限られる。

P222より、
救急車について、日本は自己負担7700円にするだけで大騒ぎだが、
海外では救急搬送を有料にしている国が多い。
フランスでは、相談や重症者の搬送は無料だが、軽症などの場合は3万円以上請求されることも多い。
ドイツでは、5~10万円程度。
米国はさらに高額で10万円以上かかる場合もあるそうだ。

P232より、
(日本の医療沈没を防ぐために)病院を集約化すれば、
限られた医療人材を効率的に活用でき、各診療科の患者の症例数も増えるから、
無駄な医療の削減や医療レベルのアップにもつながるはずだ。
過疎が進んだ地域に公立の診療所や病院を作り、
税金で給与を払うようなやり方は、人口増加時代ならともかく、
人口減少時代では維持が不可能だ。



6.おすすめなのか


真剣に日本の医療を考える人、理解したい人におすすめです。

こういう内容を義務教育で教えればいいのにと思います。
なぜ日本は皆保険制度になったのか、
そして、今、どのような現状なのか、
維持するための課題はどこにあるのか、
などを国民が正しく理解する必要があると思います。



ありがとうございました。
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