日々の読書から、おすすめを紹介します。今日は、
『社会保障のどこが問題か~「勤労の義務」という呪縛~』
2024年10月初版
1.著者
山下慎一
福岡大学法学部教授
2.どんな期待を持って読んだか
九条氏のブログを読んで知った本です。
労働者(サラリーマン)から個人事業主になったため、
年金や健康保険を切り替える手続きをしたり、
雇用保険を受給しました。
その中で、不可解なことが多いと感じたため、
理解を深めようと手にとりました。
3.構成
第1章 なぜ働き方によって社会保障が違うのかー労働者と自営業者
第2章 なぜ働き方で分立しているのかー4つの社会保険
第3章 なぜ使いにくいのかー社会保障と情報提供義務
第4章 生活保護のうしろめたさー社会保障と「勤労の義務」
第5章 「勤労の義務」の意味ー日本国憲法制定時の議論を読む
第6章 働くことと社会保障を切り離す
第3章 なぜ使いにくいのかー社会保障と情報提供義務
第4章 生活保護のうしろめたさー社会保障と「勤労の義務」
第5章 「勤労の義務」の意味ー日本国憲法制定時の議論を読む
第6章 働くことと社会保障を切り離す
終章 新しい社会保障のために
4.全体的な所感
非常に広範な範囲をカバーしており、
まさか読み切れるとは想像もしませんでしたが、
日本の社会保障の形成プロセスを臨場感をもって
感じることができ、おもしろかったです。
また、著者は、1984年生と同世代なのに、
なぜ社会保障に興味をもったのかに興味が惹かれます。
社会保障の形成の歴史、
日本というお国柄を理解することができる本だと思いました。
※社会保障の活用指南の本ではありません
ので注意してください。
5.個別の印象的な内容
P62より、
国民年金と厚生年金の分立の原因のまとめ。
①国民年金よりも前に、労働者向けの厚生年金や各種共済年金が
「それぞれ独自の沿革や目的」をもって存在してきたのだから、
それらを「ご破算」にすることはできない。
②厚生年金の被保険者である「賃金生活者」=労働者の方が、
定年などの事情から高齢時の公的年金に依存する度合いが高いため、
支給開始年齢を5歳早く設定する。
③保険料および年金給付額については、
労働者(厚生年金)も自営業者(国民年金)も同じく所得に比例する方式が望ましいが、
自営業者については、所得の把握の困難性などの技術的な問題があるため
差し当たっては断念した。
P207より、
2005年の国会において、
公的年金の一元化を主張する民主党と、
それに反対する自民党などが対立する構図があり、
以下が反対の理由である。
①労働者と自営業者の所得の把握における違いである。
労働者はガラス張りなのに対し、自営業者は把握が難しい。
また、労働者は保険料が給与から天引きされるため取りはぐれないが、
自営業者は自ら手続きをして納める必要があるため徴収率が低くなる。
②税制上の違いである。
自営業者には必要経費が認められている。
③事業主による保険料負担の違いである。
労働者は会社と半額ずつ保険料を納付するが、
自営業者はどうするのか。
④稼ぎ方の違いである。
自営業者は、定年がなく稼ぎ続けることができる。
労働者はほとんどの場合定年がある。
P215より、
社会保障の制度形成から70年ほどを経て、人々の働き方は激変した。
もともとは自営業者(農林業)向けに構築されたが、
今は非正規やフリーランスなどの労働者がかなりの割合を占める
P231より、
自己都合退職に対し、最大3か月給付しないという法規定は、
失業を自ら引き起こした労働者への制裁などと説明されることがある
6.おすすめなのか
サラリーマンから独立するにあたって年金や医療保険などの
切り替えをする人には理解しておくとよい本だと思いました。
特に私は、
社会保障が形成された70年前の
社会の考え方、国会での議事録を知ることで、
なぜ今の形になったのかを理解することができてよかったです。
政治家も当時の社会の最善を尽くして
作ってくれたのだと思います。
そして、時代錯誤なところがたくさんあるのに、
70年たった今も表面的な改定を継続している点に驚きました。
形成から70年が経ち、社会も働き方も大きく変化してもなお、
70年前の前提を変えない日本の実態を感じることもできました。
ブログテーマの投資の話に変えますと、
日経平均やTOPIXが、
ダウやS&P500に勝つことができない
真因を再認識しました。
日本は「代謝」が遅すぎる
問題が見えても改革や改善が遅い、
スクラップ&ビルドをしにくいこと
いろいろと考えさせられる本でした。
ありがとうございました。
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