日々の読書から、おすすめを紹介します。今日は、
『ファイナンス思考 ~日本企業を蝕む病と、再生の戦略論~』
2018年7月初版
1.著者
朝倉祐介
シニフィアン株式会社共同代表
東京大学在学中に創業したり、
その会社のミクシィ買収に合わせて、
ミクシィのCEOとなっています。
現在は、ファンド運営や複数社の社外取締役などこなしています。
2.どんな期待を持って読んだか
最近読んだ本(どの本かは忘れました)の中で、
推奨されていて、ファイナンスについて理解を深めたいと思って
手に取りました。
短期の売上・利益を重視した「PL脳」だけでなく、
長期で逆算的に考える「ファイナンス思考」の重要性を説きます。
長期投資の参考になりそうだと期待しました。
3.構成
第1章 PL脳に侵された日本の会社とビジネスパーソン
第2章 ファイナンス思考なくして日本からアマゾンは生まれない
第3章 ファイナンス思考を活かした経営
第4章 PL脳に侵された会社の症例と末路
第5章 なぜPL脳に陥ってしまうのか
特別付録 会計とファイナンスの基礎とポイント
4.全体的な所感
かつての高度経済成長期の成功体験を引きずっていては、
これからの経済的な成功はできない
という強い覚悟を共有することができます。
年功や過去の成功体験だけに頼っていてはいけないという
思いを強く持つことができました。
事例として、結構な紙面を割いていた、
アマゾン、リクルート、JT、関西ペイント、コニカミノルタ、日立製作所
などの内容もファイナンス思考を理解するのによかったです。
5.個別の印象的な内容
Pⅶ、
若い世代こそが、
「ファイナンス思考」を身につけ、理論武装することにより、
会社の価値を毀損するような活動に異議を唱えなければなりません。
いまだに高度経済成長の成功体験に固執する老人たちに、
未来を委ねるわけにはいかないのです。
P49、
ファイナンス思考では、
評価軸は将来にわたるCFの総量(PL脳は売上・利益のみ)、
時間軸は長期未来志向(PL脳は四半期や年度などの短期)、
経営アプローチは逆算的(PL脳は管理・調整的)。
P69、
成長ステージの違いによって、
「経営者」に求められる才覚が異なる。
GEのトーマス・エジソンとジャック・ウェルチ、
アップルのスティーブ・ジョブズとティム・クックでは、
求められる役割が頃なるのは当然なのです。
P71、
PL脳は、高度経済成長に最適化した思考形態です。
非常に計画経済的な手法と言えます。
P179、
日本の会計基準(J-GAAP)では、
買収した会社の「のれん」を償却しますが、
国債会計基準(IFRS)では、
のれんを各種の無形資産に配分した後の残った部分をのれんとして扱います。
P180、
2018年時点で、日本の上場企業のうち、IFRSを適用しているのは、151社。
今後の適用を予定しているのは、40社。
全上場企業のわずか4%。
IFRS適用会社がM&Aに積極的に取り組んでいることは、
無関係ではないでしょう。
P238、
アメリカでは過去20年間に
上場企業は7000社から3600社にまで減っていますが、
時価総額は3倍に上昇。
対する日本の上場企業数は3700社を超え、
全体の時価総額は米国の1/5にとどまる状況。
P242、
「統制経済」と呼ばれるシステムが構築された経緯について。
統制経済は、国の資源と労働力を戦争のために動員することを目的として、
「革新官僚」と呼ばれた官僚を中心に構築されたシステムのこと。
1938年、「国家総動員法」制定。
あらゆる経済活動に対して政府が介入することを可能にする法律。
1939年、初任給が公定。
従業員全員を対象にした一斉昇給を除いては、昇給は認められなくなった
(年功序列の定着へ)
なお、
1931年は87%が直接金融であり、
30年代の日本企業の資金調達は直接金融が相当の比重を占めていた
6.おすすめなのか
スタートアップで働く人や、
若い人ほどインプットしておく考え方だと感じました。
グロース市場に投資する投資家も、
四半期決算で一喜一憂しないように
このファイナンス思考をインストールすることを推奨したいと思います。
朝倉氏のこれからの活躍に期待し、
活動を追っていきたいと思いました。
ありがとうございました。
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